最近やってるaim練習もそうですが、
「なにかしらの技術に精通したい。極めてみたい。」
という思いが少なからずあります。
そんな中、ネットを徘徊していた時に
『十数歳でチェスのインターナショナルマスターになり、その数年後に太極拳の世界大会で優勝した人物がいる』
という情報を目にしました。
頭脳の勝負であるチェスと、肉体の勝負である太極拳。
これら、ぱっと見では相反しそうな2つのものを極めるには何を考えどんな事をしていったのか?
それが気になったので、その人物の自著伝『習得への情熱-チェスから武術へー 上達するための、僕の意識的学習法』を読んでみました。
あらすじ
本の著者でもあるジョッシュ・ウェイツキンは6歳でチェスを指しはじめ、16歳でチェスのIM(インターナショナルマスター)になります。
IMがどれくらい凄いかというと、日本においてチェスでIMになったのは歴代で2人。
世界には多くのIM、それ以上のグランドマスター(GM)がいますがそれにしても競技的にプレイしている人の0.01%以上になります。
それだけでも凄いんですが、そこから太極拳に魅力を感じて次第にそちらに注力し、28歳で中華杯国際太極拳選手権(ほぼ世界大会)で推手二部門制覇。
さらにその7年後にはブラジリアン柔術で黒帯取得…と、とにかく次々と各分野でトップレベルの実力になっていっています。
この本の中では、6歳でチェスを始めた時から太極拳の世界大会を制覇するまでに、著者がどのように感じ・考えて鍛錬を積んできたのかが書いてあります。
それらを紹介し、自分なりにかみ砕いて書いていきたいと思います。
増大理論と実体理論
人の知能に関する解釈として、『増大理論』と『実体理論』の2つを紹介してあります。
『実体理論』である人は、自分はこれが得意・苦手という言い回しをよく使い、成功や失敗の理由は自分の中に深く根付いた変えられない能力のレベルにあるという傾向が強い。
『増大理論』である人は結果に対して「頑張って取り組んだおかげだ」または「もっと頑張るべきだった」というフレーズを使うことが多く、鍛錬によって能力は変えられるという傾向が強い。
これらの理論の違いは自分の実力に対して難しい課題に対しての取り組み方にも影響し、『実体理論』の人は課題に挑戦する前から自分の中にある能力のレベルと比較し、「自分はできないから」「頭がいいというイメージを崩したくないから」と挑戦を避け、仮に挑戦し失敗した場合は過剰に自信を喪失しやすい。
一方、『増大理論』の人は真摯に課題に向き合い、失敗したとしてもあまり自信を喪失することなくそれを糧に次の課題へと挑戦しやすい…らしい。
これは教育でも言われてる『結果ではなく過程を褒めろ』に通じるものだと思います。
「頭がいいね~」「さすが天才だね~」と、さもその人の才能によって結果が決まったというように言うんじゃなくて、「よく頑張った結果だね~」「失敗したけど、頑張ったらできるよ~」とその人の努力を誉め、仮に失敗しても試行錯誤することで成功につながると言ってあげることが大事ってことですね。
自分は実体理論の気が強いので、なんとか直していきたいところ。
このあたりは自分で現状をなんとか変えられるという自己効力感、ひいては自己肯定感につながるかもしれません。
ソフトゾーンとハードゾーン
深く集中し最高のパフォーマンスが出せる状態にある事を『ゾーン』といいますが、著者はそれをソフトゾーンとハードゾーンに分けています。
ハードゾーンとは、ゾーンではあるものの一般的には集中の邪魔である外部の騒音や直接的な言動、周りの環境でたやすく壊れてしまうゾーンのこと。
ソフトゾーンとはそれらの要因や、それに伴う感情の変化すらも自分の集中の糧にできるようなゾーンのこと。らしい。
自分はハードゾーンすら体得したことはないけれど、確かフィギュアスケート関係の著書でも似たようなことを見た気がするので、実際にそのようなことがあるんでしょう…。
数を忘れるための数、型を忘れるための型
「こいつは何を言ってるんだ?」って思いますが、『身について自然に使えるようになった(と感じられるもの)に技術的な情報が統合されるプロセスのこと』を言うらしいです。これもなかなかわかりにくい。
著書では駒の価値を『クイーンはポーンの何個分』と知識で理解していたものが、頭で考えなくても場に力があるように直感的に理解できるようになるとしていますが…
無意識に感覚的に知識を使えるようになるってことでしょうかね?
よりハイレベルな状態になろうとするとき
『これまでの状態を脱して強い意識をもったハイレベルなパフォーマーになろうとするとき、特に大切なのは大きな目標に向かって突き進もうとする心理状態と持って生まれた気質の調和を保つこと。そこでは、本来の自分自身に背かないように新たな情報をいれていかないと、目標への道のりの数えきれないほどの障害を、重心バランスを失ったままで進まないといけなくなる。』
とありました。
つまりあくまで自分の気質、勝ちたいとか勝負事は好きでないとか、そこから逸脱しない範囲で情報を取り入れていかないと、過去の自分を捨てすぎて自己肯定感のバランスが崩れるということかな?
昔書いたことがあるこの未知と既知のバランスと重なる部分ありますね。
つまり、新しい情報を入れすぎて自分がストレスを感じすぎる状態で高い障害を乗り越えるのは厳しいよってことでしょう。
瞑想・呼吸法は『自然』が第一
瞑想の方法、呼吸法について色々ありますが、著者は『これらは元来の自然な呼吸を取り戻すためのもの』と言っていました。
これはちょっと自分も感じていて、「何秒吸って、何秒吐く。姿勢はこんな感じで…」という情報通りにやってしっくりきたことがないんですね。
それよりも、瞑想元来の目的である自然なリラックスできる呼吸を目指して自分で色々考えた方が良さげ。
1つの指針・知識として方法論を知ることはいいと思うんですけど、方法が目的になっちゃいけないってやつですかね。
元来の反応をリセットする。そのための『負の投資』
推手においては、『相手の力に対して緊張・反抗しない』というのが大事らしく、そのためには半ば反射的に行われてしまう『相手の力に対して緊張・反抗する』という反応をリセットしないといけないらしい。
自分はこれを見て、FPSにおける緊張反応をリセットしたいなと感じました。
というのも、どうもFPSというのが『相手を倒す・倒される。倒されたら一定期間何もできない』という仕様のせいか撃ち合いで必ずといっていいほど緊張する。
「撃ち負けたら終わり」という状況は元来の反応として緊張してしまう場面なので今の状況は仕方ないけど、これをリセットできればかなり撃ち合いで強くなると思う。
で、その反応をリセットするためには自分に『負の投資』を課す必要がある、とのこと。
たとえば、推手においてはいかに筋骨隆々な大男でも、まずはその筋肉を使うことなく投げ飛ばされ続けることで『相手の力に対して緊張・反抗する』という反応をリセットしないといけない。
普通なら筋肉で押したいところをそれをせずに投げ飛ばされ続ける。
自分にとってはいやなことを習得のために課す、これを『負の投資』というらしい。
そう考えると、今の自分は『撃ち負けて死ぬ』という経験を緊張反応をリセットできるまでやるべきなのかなーと。
また、体に分からせると同時に頭においても「反射的に緊張・反抗するものではない」と冷静に考え、それを頭に染み込ませていくことも大事だと思う。
ある瞬間に命運が左右されるわけではない
と、考えようねという話。
というのも「この瞬間で勝負が決まる!」という発想だと実際にその瞬間が訪れた時に興奮や緊張で神経が高ぶり過ぎてしまう。
そのため、そんな土壇場で力を発揮するにはむしろいつでも健全な状態=ゾーンに保たないといけないらしい。
つまり、大事な『瞬間』ではなくより時間軸を広げて大事な『場面』と考え、その場面中は健全な状態でいられるような努力をする。ってことかな?
健全な状態とは?それに素早くなる・保つための方法
著者曰く、『健全な状態=心静かに集中できる状態=ゾーン』というのはだれしも日常生活の中に1つはあるらしい(著書の一般男性は『息子とキャッチボールをしている時』だった)。
そして、そのゾーン(ここではキャッチボール)に他の特に目新しくもない活動をつなげることで、いつでもゾーンなれる状態にしていくらしい。
この男性の場合は
- 10分間、同じ質の軽食をとる
- 15分間、瞑想をする
- 10分間、ストレッチをする
- 10分間、ボブディランを聴く
- キャッチボールをする
という風にまずはゾーンの状態と日々の活動をつなげる。
そうすると、1か月ほどでキャッチボール前のルーティーンに慣れ、これをストレスのかかる会議の前にやったところ全く平常心のまま会議をこなすことができたらしい。
そして、次のステップとして、5のキャッチボールを外して、1~4をこなすことでキャッチボールをしていたときのゾーンになれるようにする。
そのあとは、1~4までの時間を少しずつ、ゾーンに入れるくらいに削っていく。
そうすることで、最終的にはボブディランの曲のことを考えるだけでゾーンに入れるようになるらしい。これらの全体的な期間としては何か月とかかる様子。
著者はこれを太極拳の套路で行い、最終的には呼吸1つで行えるまで短縮したらしい。
そこまで至るのはいつになるやらなので、まずは自分にとって心静かに集中できる状態ってのはいつなのか考えないと…。
瞑想による理想的な状態は過剰なプレッシャーで潰れる
瞑想によって完全に冷静な、まさに理想的な状態になったとしても、過剰なプレッシャーの前ではそれは潰れてしまう。と著者はいってます。
その過剰なプレッシャーという場面で挙げられているのがNFLのプレーオフの敵地で敵ファンがキックの失敗を祈って合唱している場面…とプレッシャーのかかり方がまさに尋常じゃない状況。
そのようにプレッシャーがかかる状況下では、ナーバスや怒りなど湧きおこる感情を消すのではなく、それを受け入れて活かす方が良いらしい。
最初の方であげたソフトゾーンに通じるものですね。
まとめ
ということで、これまでに書いたものを簡単にまとめると
- 実体理論ではなく増大理論に基づくこと。試行錯誤で能力は伸びるという考えをもつこと
- まず日常生活の中で『心静かに集中できる状態』を探すこと。そして、それに他の行動を紐づけ、漸進的に短縮していくこと
- 瞑想やその呼吸法については『自然に心地よい状態』を目指すこと
- ゾーンを維持するために感情などを排除しないこと。むしろそれすら活用しようと考えること
- ある瞬間のみが命運を左右すると考えないこと。その瞬間を含めた場面をゾーンでいられるように考えること
- 反射をリセットするためには、元来嫌だと感じる事を行い体に慣れさせる、負の投資を行う事。また頭でも考え分からせていくこと
- 新しい情報を取り入れるとき、あくまで自分の元来の気質とのバランスを考えること。既知と未知のバランスみたいな
これらを頭にいれつつ具体的な行動を起こしていけばいいかなと。
著者と同じ域に達するのはいつになるのか見当もつきませんけど…w
ちなみに、ハードカバーしかなかったんで中古でも2,000円くらいしました。新品だと3,000円。高いよ…w
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