いまや、大学等に通う学生の内38%(2.6人に1人)が借りているというJASSO(日本学生支援機構)の奨学金。
僕も大学に在学した4年間、奨学金を利用させてもらいました。
が、この奨学金というのは簡単に言ってしまえば「条件ゆるゆるの『借金』」なので、借りたお金は当然返さないといけません。
しかし、僕のように『経済的に厳しくてとてもじゃないが返せない』等の理由で返済が厳しい方もいると思います。
そのため、そんな人の為の『返還猶予制度』や『減額返還制度』が用意してあります。
今回は主に『返還猶予制度』について、
そもそも『返還猶予制度』はどういったものなのか
・適用期間や利息の扱い
・収入基準などの概要
そして、実際に申請する時にどうしたらよいのか
・申請にあたっての提出時期や必要なもの・申請方法
・具体的な申請の流れに申請から承認までの期間
・注意点やおすすめの申請時期など
を自分の経験をもとにまとめています。
文章が長くなったので、最後の『5.まとめ』に、簡潔に返還猶予の概要と申請の流れを書いています。
最初から全部読むのが大変な方は、まずは『5.まとめ』を見て、分からない内容があれば各項目を見てみてください。
また、国民年金免除・納付猶予についても『[ニートになったら]国民年金の免除・納付猶予申請をしよう[内容~実際の流れ]』の記事で書いてます。あわせてどうぞ。
※主に2017年1月時点の情報を元に、その後も適宜更新してできるだけ正確な内容となるように努めていますが、責任は取れませんので不明な点などは必ずご自分でJASSO公式ページ等で確認してください→返還が難しいとき – JASSO
奨学金返還猶予・減額返還制度とは
『経済的に厳しい』などの理由で奨学金を返済できない人のために、返還を猶予・減額する制度です。
簡単に言うと、返還猶予とは「一定期間、返還を延期する」ものであり、減額返還とは「一定期間、通常返済額の半分(1/2)または1/3を返還する」というものです。
適用期間について
返還猶予・減額返還ともに最長10年まで延長できます(1/3の減額返還の場合15年まで)。
ただし、どちらも1年毎に延長願を提出する必要があります。
利息・返還予定総額について
返還猶予・減額ともに利息を含む返還予定総額は変わりません。
返還事由について
返還猶予(一般猶予)の返還困難な事情(以下事由)には「傷病・生活保護・入学・新卒・・・」など様々なものがありますが、今回は「経済困難」による返還猶予を例に説明していきます。
他の事由については基準や提出物などが異なるため、『一般猶予 – JASSO』の各申請事由のページを確認してください。
収入基準について
経済困難事由の返還猶予の場合、収入等の基準が存在します。下表のようになってます。
給与所得のみ | 年間収入金額200万円以下(減額の場合300万円以下) |
給与所得以外の所得あり | 年間所得金額130万円以下(減額の場合200万円以下) |
つまり、ニートや無職など職に就いていない人だけでなく、新卒や非正規で収入自体が少ない場合でも充分に猶予(減額)を受けられます。
これらの収入・所得金額の確認については後述します。
※さらに、これ以上の収入・所得の方でも申請ができる場合もあります(例:被扶養者・親への援助がある等)
猶予願の提出時期について
『この期間に提出しないといけない』という決まりはなく、通年提出ができます。
ただし、猶予願や書類の提出は、原則猶予開始希望月の3ヶ月前から前々月末です(4月から開始したいなら、1月から2月末まで)。
つまり、基本的には提出してから実際に猶予されるまでには2ヶ月近くは待たないといけない計算になります。
返還猶予を提出するのに必要なもの
用意するもの
・所得証明書 or 市県民税(所得・課税)証明書 or 住民税非課税証明書(収入の確認と提出用。なお、マイナンバーを提出しておけばこれらは提出しなくて良い)
・マイナンバーカード or マイナンバーが記載された書類&顔写真のついた証明書(2018年9月より)
・猶予願&マイナンバー提出書&チェックシート
所得証明書 or 市県民税(所得・課税)証明書 or 住民税非課税証明書(省略可)
2018年9月より、マイナンバーを提出することでこれらの証明書を省略することができるようになりました。
そのため、所得金額を確認する必要がある場合のみ、『所得証明書の取得』をしましょう。
これらの書類で、基準となる収入・所得を確認できる
例えば、給与収入のみの方の場合は「給与収入金額」または「給与支払金額」の部分。
給与以外の所得も含む場合は「合計所得金額」の部分で収入・所得を確認できます(確認の際の注意点について詳しくはこちら)。
加えて、その金額が「猶予申請する予定日の”前年度分”のもの」かも確認する
例えば、平成29年1月(平成28年度)中に申請する予定だった場合、金額部分に「平成27年分 合計所得金額」と”前年度分”(平成27年度)の収入・所得が書いてあればOK。
※平成29年4月(平成29年度)に証明書をもらったとすると、金額部分には「平成27年分 合計所得金額」と”前々年度”(平成27年度)のものが書かれているはずです。こういった場合は追加の書類が必要になります(こちらのページ中段の『猶予開始希望月が平成29年4月から・・・』の部分を参考にしてください)。
マイナンバーカード or マイナンバーが記載された書類&顔写真のついた証明書(2018年9月より)
2018年9月より、マイナンバーの提出が義務化された事により、提出する必要がある証明書です。
マイナンバーカードがあれば、その表面と裏面のコピー。
なければ、「通知カードの表面のコピー」と「運転免許証など(顔写真付きの公的身分証明書)の表面のコピー」です。
もし、記載事項に変更がある場合は裏面のコピーも必要になります。
※通知カードや運転免許証などがない場合の対処法は、『こちらのページ(独立行政法人日本学生支援機構)』を見てください。
猶予願・マイナンバー提出書・チェックシート
猶予願は猶予を申請するための書類。
マイナンバー提出書はマイナンバーを申請するための書類です。
チェックシートは記入内容や添付書類が正しいかチェックするためのシートですね。
僕はJASSOから送られてきていた封筒に入っていたので、それを利用しました。
その他の入手方法としては、「ホームページからダウンロード」、「自動FAX送信・電話で請求」などがあります(詳しくはこちらの「猶予願・チェックシートの入手」から)。
具体的な全体の流れ(僕の場合)
今回は、
・猶予願などを送ったのが1月上旬
・できるだけ早く猶予を希望
という条件で返還猶予の手続きを行っています。
収入を確認するために所得証明書を取得する
まず、猶予願とチェックシートはすでにもっていたため、最初に「所得証明書 or 市県民税(所得・課税)証明書 or 住民税非課税証明書」を貰いに行くことにしました。
ここで迷ったのが、自分はどの証明書を貰えばいいのか。
自分の状況を考えると、「所得は無いし、市県民税は払ってないし、住民税は非課税だから『住民税非課税証明書』かな?」と考えてました。
が、結局面倒になったため、役所の窓口で「奨学金の猶予申請をするためにこれらの証明書の内1つが必要だ。」という旨を説明したところ、全部がごっちゃになったような証明書を貰うことができました。
ということで、役所の人に同じように尋ねるのが一番早いし確実だと思います。
ちなみに、証明書の合計所得金額の欄は「¥0」という数字になってました。そりゃそうだ。
マイナンバー提出に必要な書類のコピー
僕の場合は「通知カードの表面のコピー」と「運転免許証の表面のコピー」が必要だったのでコンビニでコピーしました。
『記載事項に変更がある場合は裏面のコピーも必要』とのことですので、とりあえず裏面もコピー。
ちなみに、通知カードと免許証をまとめて1枚にコピーするとちょっとお得です。
猶予願の記入。事情欄は要点を抑えれば案外楽にかける。
猶予願の記入の際には、記入例を参考にして書きました(こちらのページの「【記入例】猶予願 記入例(PDF)」が参考になります)。
奨学生番号や住所、氏名などはいいとして、少し困ったのが「事情」と「今後の返還見通し」の欄です。
僕が書いたものを要点だけまとめると、まず事情については
・様々な事情により安定した職業につけず、収入が少なく不安定
・収入〇円に対してこんな支出が〇円あり余裕がない
・奨学金の返還が困難なので、返還期限猶予をお願いしたい
こんな感じ。続いて今後の返還見通しについては
・様々な事情も改善していき、収入も多く安定させていく予定
・猶予期間終了時には返済できるようにしたい
といった感じ。
全体的に気をつけた事は
1.事実と異なることを書かない
2.不安定&低収入で、妥当な支出を払うと金の余裕が無いアピール
3.今は返済できないが、将来的には返済できる予定
の3点。
記入は黒(青)の消えないボールペンですることになるので、しっかり内容を考えて書き始めたほうがいいです。
特に、文字数はだいたいオーバーするので、1行最大50文字と見積もってコンパクトに書いていきましょう。
※記入するとき、フリクションとか使っちゃダメですよ。消えるから。
マイナンバー提出書の記入・書類貼り付け
自分の氏名や住所、マイナンバーを記入していきます。
ちなみに、マイナンバーの番号確認書類(僕の場合、通知カード)はこの提出書に貼る必要があるので注意。
ただし、本人確認書類(僕の場合、運転免許証)は貼らなくて良いようす。
内容チェック、封筒の用意、送付先住所・郵便料金など
猶予願・マイナンバー提出書が用意できたら、チェックシートを使ってチェックします。
チェックがおわったら、次は書類を入れる封筒の用意。
僕は手元にあった角型8号に半ば無理やり押し込みました。
手頃な封筒がない方は、定形郵便規格の長形3号(A43つ折)や長形40号(A44つ折)を買いましょう。
100均やコンビニなんかで買うのがオススメ(個数がちょうど良いから。他にもたくさん使うならネットでもOK)。
封筒も用意したら送付先の住所・宛先を書いていきます。
ちなみに、2018年11月現在は郵便番号と宛先だけで届く様子(切手貼らなくて良いってわけじゃないよ!)。
ですので、郵便番号に「〒119-0385 」、宛先は「独立行政法人 日本学生支援機構 猶予減額受付窓口 宛 」で大丈夫(減額の場合も同じ)。
実際に封筒に書くとこんな感じになります。
裏には自分の郵便番号・住所・名前を書いときましょう。
後は、これを『簡易書留』で送ります。
郵便局の窓口に行って、「これを簡易書留で送りたいんですけど・・・。」って言えばOK。
料金は、僕の場合392円でした。とりあえず500円あれば余裕です。
※『マイナンバーを提出する際は簡易書留で送付してください』との但し書きがあったので、すでにマイナンバーを提出した方は普通の郵便(切手貼って送るアレ)で良いはず。
送付から承認まで
1月10日ごろに送付し、送付から15日後(約2週間)たったころにJASSOから封筒が届きました。
ドキドキしながら中を見てみると、猶予の承認通知が入ってました。よかった・・・。
てっきり、1月に申請したので早くても2ヵ月後の3月からの猶予になるかと思ったのですが、猶予期間を見てみると1月から1年間猶予されていました。
ということで、書類を送った当月から猶予が承認されたということです。ほんとありがたいわ・・・。
注意点など
延滞する前に返還猶予・減額返還を!
まず、延滞してしまうと減額返還はできません。注意してください。
返還猶予については延滞していてもできますが、JASSOの公式サイトには『できるだけ早く提出してください』。としか書いてありません。怖いです。
とにかく、延滞してしまいそうになる前に猶予or減額をしておきましょう。
平成28年熊本地震による災害事由への切替えについて
ちなみに、熊本在住ということもあってか、『災害事由猶予への切替えについて』という案内も同封されていました。
これによると
・猶予願(事情欄に『家屋等の被害状況』と『「2016年4月以降災害事由へ切替え希望」』と記入)
・り災証明書の原本(平成28年熊本地震のもの)
をあわせて送ることで災害事由猶予へ切り替えることができるそうです。
おすすめの申請時期について~書類を揃えるのが面倒な方へ~
[2020/11/07追記]2020年11月現在、おそらくですが申請時期によって追加の書類を出す事はないようです。なので、とにかく申請したい時に申請するようにしましょう。
[追記ここまで]経済困難事由の申請時期については、毎年7月~1月の間に行うのがおすすめです。
というのも、これ以外の時期に申請する場合には追加の書類が必要になる場合があり、手続きが少し面倒になってくるからです(必要な追加書類など、詳細についてはこちらのページ中段の「猶予開始希望月が平成29年4月から・・・」の項目を見てください)。
以下、解説が長いので興味のある方だけ読んでください。
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なぜ追加の書類が必要になるかについては、「経済困難の審査では主に猶予開始の前年度の所得証明書が参考にされている。」ということを考えると分かります。
というのも、自治体によって差がありますが、主に4月~6月に取得できる証明書は前々年度のものであり、前年度の所得を証明することができません。追加の書類で前年度あるいは直近の経済状況などをJASSOに知らせる必要があるのです。
ですので、きちんと前年度の所得証明書が手に入れられる7月~3月の間に申請したほうが手続きが楽ということになります。
ここで、「2月~3月に前年度の証明書が手に入れられるなら、なぜ2月~3月に申請しないほうがいいのか?」という疑問もあるかと思いますが、これは「申請は希望月の3ヶ月前から前々月末まで」という決まりを考えると分かります。
例えば、平成28年度の2月に申請すると、原則では最速でも平成29年度の4月から猶予開始となってしまいますので、審査には平成28年度の所得を証明するような書類が必要になるかもしれないからです。
ですが、今回の僕の例のように書類の送付から猶予承認まで約2週間で完了するということもあるので、2月~3月上旬までなら大丈夫なのかな?とも思います。
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2年目以降の申し込みと、2018年9月からの変更点
2年目以降は、猶予終了月の約3ヶ月前に申込書が入った封筒が届く
2年目以降は「もう猶予が終了します。返還を始めてね。」というお知らせと猶予申込書の入った封筒が約3ヶ月前に送られてきます。
僕の場合は1月から猶予を開始したので、10月~11月頭くらいに届きました。
もし通常通りの返還ができるならそのまま返還を始めればOK。
できなければ、同封の申込書に必要事項を書いて、猶予を開始したい月の先々月末までに猶予や減額返還を申請しましょう。
2018年9月からマイナンバーの提出が義務化。それに伴い一部の書類を提出しなくてよくなった
2018年9月以降の申請から、マイナンバーの提出が義務化したようです。
これにより、マイナンバーカードや、マイナンバーが記載された書類を提出する必要があります。
が、そのおかげで、経済困難事由で提出が必要だった所得証明書などを提出する必要がなくなりました。
マイナンバーは一度提出するだけでよく、次年度からは所得証明書もマイナンバーカードも提出する必要なくなるので手続きとしては以前より簡単になりますね。
まとめ
まず、返還猶予(減額)について知っておくべきことはこんな感じ。
・最長10年(15年)まで延長できる
・利息を含む返還予定総額は変わらない
・『傷病、生活保護、入学、新卒、経済困難・・・』など様々な理由から申請できる
・経済困難の場合、給与収入のみだと年間200万(300万)以下から申請できる
・通年届出できるが、原則猶予開始を希望する月の前々月までに届出する
返還猶予(経済困難)の簡単な流れはこんな感じです。
- 時期はいつでも良いのでとにかく早く申請する
- 猶予願とチェックシート、マイナンバー関連書類を用意し、猶予願に各項目を記入
- チェックシートでチェックを行い、必要書類を封筒に入れて送る
- 送って2週間ほどで通知が到着、最速当月~遅くとも2ヵ月後から猶予開始
上記の流れの中で詳しい内容を知りたい方は、各リンクをクリック・タップしてもらうと記事中の該当部分に飛びます。
今回返還猶予の手続きをする中で色々調べてみましたが、やっぱり奨学金は『超やさしい借金』です。
借金であることには変わりはないですが、今回説明したような返還猶予を初めとした様々なセーフティネットが用意されていることが分かりました。
どうしても返済が厳しい・生活が苦しい方はこれらのセーフティネットを上手く活用して、少しずつ返済・改善していきましょう。
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参考サイト
下記のページから減額返還・返還猶予共に詳細を確認することができます。今回の記事内容は下記ページからのリンク先を主に利用して作成しました。
特に「減額返還・返還期限猶予リーフレット」は非常に簡単に分かりやすく減額返還・返還期限猶予をまとめてあります。
下記のページ内の「奨学金事業への・・・データ・ファクト集〕」は奨学金全般について分かりやすくまとめてあります。延滞者の割合や延滞した場合の対応など非常に興味深かったです。
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